鍛造品の品質管理で重要なことは?鍛造品の代表的な不良、鍛造三悪とは

製造業が満たすべき顧客要望を一般にQCDと言います。Qは品質(quality)、Cはコスト(cost)、Dは納期(delivery)です。

ちなみ、筆者は「顧客目線で考えるのであれば、costではなくprice(価格)では?と考えていた時期があります。コストの中には価格も含まれますが、「何に、どれくらいの費用が使われて部品を製造したか」が売り手にも買い手にも重要であると、今では考えています。

川上鉄工所は、QCDの中でも、安定品質の製品を安定供給することを重視して日々、仕事をしています。安定品質の製品を安定供給する上で、重要なことの一つは、不良を出さないことです。
一般に、鍛造品にどんな不良がありうるのか。知っておくことは品質管理をする上で重要です。
そこで、鍛造品の代表的な3つの不良についてご説明します。

鍛造品の種類についてはこちらのページもご参考ください → 近畿鍛工品事業協同組合_鍛造品の種類

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1.鍛造三悪とは?

鍛造品において、絶対にあってはならない3つの不良のことを鍛造三悪(たんぞうさんあく)と呼びます。
三悪の内容は、異材、②オーバーヒート、③疵(きず)の3つです。

なぜ、「鍛造三悪」と呼ぶのか。その理由は、“人の目で見ても分からない(判断できない)致命的な不良”であることが理由とされています。

2.鍛造三悪-異材とは?

一つ目の「異材」とは、「いざい」と呼びます。異材は、図面もしくは作業手順書に明記されている材質とは異なる材質の材料を使用し製造してしまうことを言います。

材料を間違えてしまうと、部品本来の強度が出ない可能性があります。その結果、製品の強度や性能に重大な影響を与え、最悪の場合、製品の破損や人命にかかわる事故を引き起こす可能性もあります。

例えばSCM420とSCM415は材質が違います。ただし、切断した材料の長さと径が同じ場合、重量も同じになります。なので、2つ並べられると、どちらがどっち?と分からなくなります。判断する方法がないわけではないですが、ぱっと見で判断することはできません。

3.鍛造三悪-オーバーヒートとは?

二つ目の「オーバーヒート」とは、材料の焼き過ぎのことを言います。

焼き過ぎとは、必要以上に加熱温度を高く設定したために、材料の金属組織が著しく成長し(結晶粒の粗大化)、粗くなり、結晶粒と結晶粒の間(結晶粒界:けっしょうりゅうかい)が融解し、融解した部分から空気中の酸素が侵入し酸化し、結晶粒界が破壊され、材料の組織や性質が変化してしまうという不良です。

一度、オーバーヒートを起こした材料は再び、鍛造や熱処理(ねつしょり)を行っても、元の組織(元の状態)には戻りません。

このように鍛造品は、組織がボロボロになった状態では、材料本来の強度が著しく低下しているため、もはや部品として使用することはできません。材料を溶かすほどの高温で加熱すれば、材料の表面が通常の加熱とは異なる状態になっていることに気が付けるかもしれません。しかし、金属組織(材料の内部)は材料の表面を目視しても分かりません。そのため、オーバーヒートもぱっと見で判断することはできないため、重大な不具合として発生、流出防止を徹底しなければなりません。

4.鍛造三悪-疵とは?

三つ目の疵(きず)にはいくつかの種類があります。例えば「かぶさりキズ」は鍛造品の表面に一部の肉が覆いかぶさることよってできたキズのことを言います。

目視で発見できる「当てキズ」や欠肉(けつにく)というキズもありますが、目視で発見できない鍛造品の表面に線状の欠陥は、磁粉探傷(磁気探傷)検査でキズの位置を特定します。

この検査方法は鍛造品に電流を流し、磁化させてキズの位置を特定します。ただし、磁性を持つ材料にしかこの方法は使用できません。

5.四つ目の重大な不具合とは?―工程飛ばし

さらに弊社では4つ目の重大な不具合を品質管理の対象としています。それは「工程飛ばし」です。

工程飛ばしとは、指定された熱処理などが実施されないまま次の工程に流れることです。熱処理の工程飛ばしもまた、見た目で分かりません。その意味では一番気を付けなければならない不良要因とも言えます。

6.不良を出さないための工程管理

では、上記の不良を出さないためにはどのような工程管理が必要なのでしょうか。

異材の混入を防ぐための材料の識別、オーバーヒートを防ぐための温度管理、疵を発見するための適切な検査方法の選定など、各工程での厳格な管理が求められます。また、工程飛ばしの防止には、作業手順の確認と徹底が重要です。

不良要因 必要な工程管理
1 異材(いざい) 材料の識別、切断した後の数量(個数)管理
2 オーバーヒート 温度管理
3 疵(キズ) 適切な検査方法の選定(磁粉探傷(磁気探傷)検査など)
4 工程飛ばし 作業手順の確認と徹底

鍛造品の品質を保つためには、これらの不良を未然に防ぐための対策を常に講じる必要があります。品質の高い鍛造品を提供するための凡事徹底を実践することで、顧客からの信頼を獲得し、ひいては業界全体の信頼性を高めることが可能となります。

川上鉄工所では、鍛造品の4つの不良の防止のために、工程管理を行っています。鍛造品に関するお問合せは以下のフォームからお願いいたします。

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