工具が揃っているのは、なぜか?(2026年_4月号)
川上鉄工所メルマガ_2026年_4月号
はじめに
いつも大変お世話になっております。
株式会社川上鉄工所の川上朋弘です。
このメールはお世話になっている方々に近況報告をお送りするメールです。
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3月のメルマガへのご返信、ありがとうございました。
「恕の心」「情のある対応力が信頼関係を高める」。そんな言葉をいただきました。
相手を想像することの大切さを、皆さんからあらためて教えていただいた気がしています。
工具棚の前で
先日、現場の片づけをしていたときのことです。
加工機の工具棚の前で工具を手に取っていると、ある社員が声をかけてくれました。
「この工具の揃え方は、こういう理由があるんです」
聞くと、工具の配置は仕事の順序そのものだと言う。棚を見れば、その日どんな段取りで加工機が動くかが見える。工具が揃っていなければ、プログラムが変わり加工方法が定まらない。分からないから操作するのも怖い、とその社員は言っていた。
なるほど、と思いました。
と同時に、少し恥ずかしくなりました。
普段の会話では分からないことがある。その人の仕事ぶりは、去った後に気づくのでは遅い。見ているようで、見えていなかった。
言葉がなくても、伝わっていたもの
気になったことがありました。
この並べ方は、誰から教わったのだろうか。
聞いてみると、すでに退職した前任者の仕事の仕方だったのです。
前任者は、おそらく言葉では残していません。マニュアルを残したわけでも、引き継ぎのときに説明したわけでもなさそうでした。
ただ、整えられた状態だけが残っていた。
それでも後任者は棚の状態を見て「なぜこうなっているのか」を考え、加工するものが変わっても工具棚の一貫性を保っていた。
言葉がなくても、伝わっていたものがある。
想像力の痕跡
なぜ伝わったのか。
私はしばらく考えて、一つの答えにたどり着きました。
前任者が「次の人」を想像して仕事していたからだ、と。
自分が去った後、この棚を使う人が困らないように。その人が気持ちよく走れるように。そう考えて工具を並べていたから、言葉がなくても状態に意志が残った。整えられた棚は、前任者の想像力の痕跡だったのです。
おわりに
私は日頃、「言語化しないと伝わらない」と言い続けてきました。言葉にして、文書にして、仕組みにする。それが経営者の仕事だと。
その考えは今も変わりません。
ただ、一つ付け加えたいことがあります。
どれだけ丁寧に言葉を残しても、次の人を想像せずに書かれたマニュアルは、薄い。逆に、言葉がなくても、次の人を想像して整えられた仕事は、それ自体が引き継ぎになる。
伝わるかどうかは、技術でも言葉の量でもなく、想像力の問題ではないか、と今は思っています。
次の人のことを考えて仕事する。
当たり前のようで、できているかどうかは別の話です。
皆さんの現場にも、そういう棚がありますか。あるいは、自分がそういう棚を作れているか。
川上鉄工所が、そういう現場になれているかどうか。工具棚の前で、私はそれを思い知りました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、メールさせていただきます。
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