鍛造(たんぞう)の歴史は?桃太郎伝説との関わりは?

momotarou

突然ですが、桃太郎の発祥地がどこであるかご存じでしょうか。

岡山県です。…と岡山県民の筆者としてはそう答えたいところですが、
実は、全国各地に桃太郎の伝説があります。
興味深いのは、これらの伝説が「全国桃太郎連合会」という組織まで存在するほど広がっていることです。
特に岡山県総社市では、桃太郎の元となったとされる「温羅伝説(うらでんせつ)」が有名です。

※ここでご紹介している事例の中には川上鉄工所で検証したもの以外も含まれます。
※一つの情報提供だとお考え頂き、責任はご自身の判断でお願いいたします。

 

1.日本における鍛造のルーツは?

鍛造はもともとエジプトやメソポタミアで生まれた技術のようです。
インド、中国を経て、百済(くだら)から日本に伝えられたのは、4世紀頃とされています。

西暦660年に、新羅(しらぎ/しんら)が百済を滅ぼした後、百済から日本に多くの人が移住しました。
その中には、鍛造技術を持つ技術者もいたようです。

岡山に伝わる「温羅伝説(うらでんせつ)」は、そうした製鉄技術を持つ渡来人を討伐するという物語に由来します。「温羅伝説」とはどんな伝説なのでしょうか。

2.温羅伝説(うらでんせつ)とは?-モノづくりとつながる、おとぎ話

昔々、異国の王子が家来と共に吉備の国に流れ着きました。王子の名は温羅(うら)。身長は4m、両目は虎や狼のようにらんらんと輝き、髪や髭はぼうぼう。そして性格は極めて凶暴。(※牛と虎は、十二支で表した方位の「丑寅」の方角にあたり鬼門(きもん:鬼の出入りする方向)と呼ばれます。そのため『丑(牛)の角に寅(虎)のはきもの』が鬼のイメージになりました。ちなみに、鬼門(丑寅)の反対に位置する干支が申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)であるのがまたおもしろいです。)

根城としていた山城(鬼ノ城(きのじょう):岡山県総社市の鬼城山(きのじょうざん)に築かれた日本の古代山城)から降りてきては村を荒らし、人をさらっては釜茹でにして食べるという残虐ぶり。村人から大変恐れられていました。

村人達は温羅の悪逆非道に堪えかねて、ついに大和朝廷に温羅討伐を依頼します。朝廷から派遣されてきた人物こそ、かの有名なキビツヒコノミコト(吉備津彦命)と呼ばれる人物でした。

合戦は遠距離戦となりました。ミコトが矢を放てば温羅が岩を投げ、空中でぶつかり勝負がつきません。そこでミコトは強い弓を使い、一度に2本の矢を放ちました。温羅は不意をつかれ、放った1本が温羅の左目に命中します。

温羅の左目から吹き出した血潮は川を赤く染めました。ミコトに追われた温羅は雉に姿を変え山に隠れましたが、鷹に姿を変えたミコトが追いかけてきます。今度は鯉になって逃げましたが、ミコトは鵜に姿を変え、とうとう温羅を捕らえました。

捕らえられた温羅は首をはねられましたが、温羅の唸り声は止みません。ある神社のお釜殿の地下深くに首を埋めましたが、それでも唸り声は止みません。ある夜、ミコトの夢枕に温羅が立ち、こう言います。

「我が妻、阿曽媛(あぞひめ)に釜の火を炊かせてくれ。
これまでの償いにこの釜をうならせ、世の吉凶を告げよう」

釜を炊く習わしは、吉備津神社の神事、「鳴釜神事(なるかましんじ)」として今なお、続いています。

温羅伝説は時の政権が吉備の国を平定したというお話です。ただ、見方を変えれば、製鉄技術を危険視した政権の侵略に吉備の国が抵抗し、敗れはしたものの、今なお吉備の国の繁栄を見守ってくれている、とも見てとれます。

桃太郎のおとぎ話の背景には、この温羅伝説があります。桃太郎が鬼を退治し、宝を取り戻す、という物語の背後には、技術と力を巡る古代のドラマが隠されています。

つまり、岡山の鍛造の歴史は、桃太郎伝説と深い関係があるのです。

鍛造とは、鉄を加熱して叩いて形を作る技術です。岡山には古くから鍛造の技術が伝わっており、日本の鉄文化の発展に寄与してきました。岡山の鍛造の歴史は、日本の鉄文化の発展に深く関わっています。

特に「たたら製鉄」は地域の伝統的な技術として重要です。

3.「たたら製鉄」とは?岡山における鍛造の歴史は?

「たたら製鉄」とは日本古来の鉄の製錬方法です。砂鉄と木炭を高温で反応させて鉄を得る技術です。具体的には、ふいごを使って砂鉄と木炭を高温で反応させ、鉄を得る技術です。最近では、あの「VIVANT」でも話題になりました。

低温で還元することで高品質な鉄を得ることができます。岡山には砂鉄や木炭、粘土などの資源が豊富にあったため、「たたら製鉄」が盛んに行われました。※中国山地より北側(山陰側)では鍛造が、中国山地の南側(山陽側)では鋳造が盛んでした。その理由は採取できる砂鉄の種類が違ったことが理由のひとつです。

「たたら製鉄」で得られた鉄の中でも、不純物が非常に少ない高品質な鉄である「玉鋼」(たまはがね)は、日本刀の原材料としても有名です。玉鋼を鍛造することにより、日本刀が作られます。玉鋼は、最近では「鬼滅の刃」というアニメでも脚光を浴びました。

桃太郎が鬼退治に使った刀も、きっと玉鋼で作られていたのではないでしょうか。

しかし、「たたら製鉄」は自然にも大きな影響を与えました。砂鉄や木炭を採取するために、山や森が切り開かれ、環境が破壊されました。自然と人間の対立をテーマにしたジブリ映画「もののけ姫」の舞台は、「たたら製鉄」が行われていた中国山地に設定されています。

「もののけ姫」の舞台設定は「たたら製鉄」が盛んに行われていた地域の特性を反映し、鉄生産のために自然が損なわれる様子を描いています。つまり、岡山地域の自然と人間の関係を表しているとも言えます。

「たたら製鉄」や「たたら製鉄」と関わりの深い鍛造の技術は、人間の力と知恵の結晶です。桃太郎伝説ではこうした技術が鬼に対抗する武器となりました。

一方で、鍛造の技術は、自然の恵みとの調和を失わせる要因ともなりました。つまり、桃太郎の物語は、岡山の鍛造の歴史と自然との関係を象徴するものと言えます。

「たたら製鉄」は、明治時代に西洋の製鉄法が導入されるまで続けられ、その後は次第に廃れていきました。

鍛造技術は、江戸時代にはすでに高度なレベルに達していましたが、近代化の波により大きく変化しました。明治時代には、工業化と国防のために新しい技術が必要とされ、欧米から専門家が招かれました。

日露戦争や第一次世界大戦の影響を受けて、鋼材の需要が高まり、鋼の製造と加工の分野が発展しました。第二次世界大戦後は、自動車や家電などの産業の発展に伴って、精密鍛造や冷間鍛造などの新しい技術が確立されました。

現在ではコンピュータやロボットなどの先端技術を用いた鍛造が行われており、品質や生産性の向上を目指しています。

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