地域とつながるデジタル革新~セミナー「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」を振り返って~

川上鉄工所の川上朋弘です。2024年12月26日、私はOI-startが主催したセミナー「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」に参加し、地域社会と連携した研究事例を発表させていただきました。

このセミナーは、デジタル技術を活用したものづくりの新しい可能性を探り、大学や企業、研究者が交流する場として開催されました。当日はOI-Start会員を中心に60名を超える企業、研究者が参加されました。

セミナーの目的は、デジタル技術の革新事例を共有するだけでなく、産学官が協力して地域の産業や社会に新たな価値を提供することでした。このような取り組みを岡山という地域で進められることを、地元企業の一員として誇らしく感じています。

おかやまデジタルイノベーション創出プラットフォーム(Okayama Digital Innovation Starting Platform):略称OI-Start(オーアイ・スタート)は、岡山大学が岡山県と連携して、2024年5月に発足したプラットフォームです。地域の企業や自治体、大学などが連携してデジタル技術を活用したイノベーション創出を目指す場として創設されました。その目的は、岡山県内の企業や自治体の生産性や魅力向上、また、若者の県内定着・還流を推進することです。2024年12月に、OI-Startの会員数は100機関を突破しています。

1.「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」内容紹介

セミナーでは、大学や高専の研究者、そして企業からの計8名が発表を行いました。それぞれが最前線の技術や研究成果について説明され、ものづくりがどのように変わりつつあるのかを示されました。8発表の中から、抜粋して以下にご紹介させていただきます。

(1)「塑性加工における数値シミュレーションの利用と加工熱処理による高機能化」

例えば、岡山理科大学の寺野元規准教授による「塑性加工における数値シミュレーションの利用と加工熱処理による高機能化」の発表では、バニシング加工に熱処理を加えた時、金属の表面組織の微細化と引張強度の関係は、解析によって可視化し、説明が可能であるということを説明されました。バニシング加工とは、金属の表面を削らずに押しつぶすことで、表面を滑らかにし、硬度や精度を向上させる加工方法です。

何より大学単独または企業単独で研究を進めるのではなく、共同研究と言う形をとることでうまくいくのではないかとも仰っておられたことが印象的でした。

(2)「三次元湯流れ解析プログラムの高精度化と鋳造欠陥発生原因の検討」

また、岡山県立大学の福田忠生准教授の「三次元湯流れ解析プログラムの高精度化と鋳造欠陥発生原因の検討」も、企業が実際に困っていることを解析によって対応策を導き出した発表でした。

鋳造プロセスで発生する欠陥の原因を解析するのですが、キズ発生の原因は金型の形状や湯の温度や湯を金型に入れる時の空気の巻き込み方など様々で、企業の知見と照らし合わせながら製品を生み出すための考え方が紹介されました。

(3)「新商品開発で実現するBX~オープンイノベーションによるAI自律走行『草刈り機』の開発~」

他の企業の発表も非常に参考になるものでした。オカネツ工業株式会社による「AI自律走行草刈り機の開発」の発表では、農業分野の課題解決に向けた革新的な技術が紹介されました。この草刈り機は、人工知能を活用し、作業の効率化と省力化を目指したものであり、今後の地域社会における農業の未来を大きく変える可能性を秘めていると感じました。BX:ビジネストランスフォーメーション

(4)川上鉄工所の発表「産官学連携による新工法開発への挑戦」

川上鉄工所からは「産官学連携による新工法開発への挑戦」と題して発表を行いました。産官学連携によって、技術開発を大きく進めることができた事例をご紹介させていただきました。

スマート鍛造プロセスの開発は、川上鉄工所が長年取り組んできた技術開発でした。自社単独で開発していたときは、「鍛造直後の鍛造品がどのように冷えていくか」について、人力でただただ時間をかけて、冷却スピードのデータを採取するという調査手法を取っていました。

スマート鍛造プロセスの詳細 → こちらをご覧ください

「スマート鍛造プロセス」とは?―径差のあるギアシャフト向け加工熱処理技術

それが、産官学連携による開発になったことで、岡山県立大学さまの助力を得て、冷却スピードをデジタルでとらえ、シミュレーションするという方法を取ることができ、技術開発を大きく進めることができました。

発表後に参加者の方から「よく考えられた具体的な応用事例で分かりやすかった」といった感想をいただきました。私たちの取り組みが他社や研究者にとって新たなヒントになればと嬉しく思いました。そして、自社の技術がどのようにして地域や社会に貢献するかを考え、発信する貴重な場でもあったと感じています。

2.「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」で得られた気づき

(1)「地域連携」や「共同研究」の重要性

今回のセミナーを通じて、私は「地域連携」や「共同研究」の重要性を改めて認識しました。デジタル技術の進化がもたらす変化は大きく、単に技術を導入するだけではなく、それを地域社会や他の企業とどう連携して活用するかが鍵となります。

さらに、大学や研究機関が提供する知見と、企業が持つ実践的な課題解決力を組み合わせることで、より大きな成果が生まれる可能性を強く感じました。今回のセミナーを通じて知り合った企業や研究者の方々とのネットワークを、今後の技術開発や製品化に活用していきたいと考えています。

(2)次世代を担う人材を育てるために教育環境が果たす役割の重要さ

最後に、セミナー後には岡山理科大学工作センターの見学が行われ、学生たちが実践的な学びを通じて未来の技術者として育成されている姿に触れることができました。このような教育環境が、次世代を担う人材を育てる重要な役割を果たしていることを実感しました。

私たち川上鉄工所は、これからもデジタル技術の可能性を追求しながら、地域との連携を大切にし、持続可能で革新的なものづくりに挑戦していきます。私たちの活動に興味を持っていただいた方は、ぜひ当社のホームページやブログをご覧ください。そして、今後の展開にもどうぞご期待ください!

【川上鉄工所の産官学研究実績】

・平成23年度戦略的基盤技術高度化支援事業採択案件                        (被削性およびコスト低減を可能にするスマート鍛造プロセスの開発)

・平成28年度きらめき岡山創成ファンド採択案件                           (コバルトクロム合金の鍛造における加工率と再結晶の高精度制御)

・平成28年度次世代産業研究開発プロジェクト創成事業に参画(ステンレス製低圧水素配管システムの開発)

「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」の開催については、岡山大学のサイトでも紹介されています。合わせてご参照ください。

「デジタル革新~ものづくり研究・技術の最前線~」を岡山理科大学と共同開催~ものづくりにおけるデジタル技術活用事例を紹介~ → こちらからご覧頂けます

問合せフォームへ