社員全員で工場見学をする理由(2025年_11月号)

川上鉄工所メルマガ_2025年_11月号

10年ぶりの再会から始まった工場見学

先日、私たち川上鉄工所にとって、とても印象深い出来事がありました。

11月19日、社員全員でとある鋳造会社A社様の工場を見学させていただいたのです。

この見学は、10年以上前に一度弊社にお越しいただいたA社様との、10年ぶりの再会から始まりました。

きっかけは、A社様が弊社にお越しになられた際、A社の会長から思いがけないお言葉を頂戴したことにはじまります。

「今度は社員全員連れてお越しください」

この言葉に、私は深く考えさせられました。そして、会長はさらにこう続けられたのです。

「社員全員連れてくるかどうかは、社長の覚悟の話ですよ」

「覚悟」の言葉が意味するもの

この言葉を聞いた時、私の頭に最初に浮かんだのは、「生産が止まることへのリスクのことだろうか」という思いでした。

社員全員で工場を空けるとなると、その日の生産はストップします。それは会社にとって、決して小さくない損失です。

経営者として、そのリスクをどう捉えるか、という問いかけだと、最初はそう理解したのです。

しかし、会長の言葉の真意は、もっと深いところにあるのではないか、と後になって気づかされました。

それは、「社員に外の世界を見せることは、時に、経営者にとって耳の痛い話になる」ということなのではないかと。

外の世界を見せること。それは、社員一人ひとりが、自分たちの会社を客観的に見つめ直す機会を与えられる、ということだと思います。A社様は新しい工場を建設されており、設備も環境も、私たちの工場とは大きく異なるかもしれません。同じ「ものづくり」の現場であっても、その働き方や考え方には、様々な違いがあることでしょう。

社員たちは、A社様の工場を見て、何を思うでしょうか。

「こんな設備があれば、もっと効率的に作業できるのに」
「うちの工場も、もっとこうなればいいのに」
「こんな働き方もあるのか」

そういった声が上がるかもしれません。

それは、私たち経営者にとって、現状への問いかけであり、時には耳の痛い批判として聞こえる可能性も考えられます。

葛藤と決断

正直に言えば、私自身、不安がなかったわけではありません。A社様は鋳造の会社であり、私たち川上鉄工所は鍛造を主としています。同じく暑くて重い製品を扱う現場ではありますが、新しい工場と私たちの工場とでは、作業環境に大きな差があるだろうと想像していました。鋳造工場を見学したからといって、すぐに社員の仕事に直接結びつくわけではない、という思いもありました。

「本当に社員全員で行く必要があるのだろうか?」

そんな葛藤が、私の心の中には確かにありました。

それでも、私は社員全員での工場見学を決断しました。

その理由は、「全員で同じものを見る、観るという体験に価値がある」と考え、小さな一歩を踏み出せると考えたからです。

同じものを見て、それぞれが何を感じ、何を考えるのか。その感じ方や考え方は、きっと一人ひとり違うことでしょう。そして、その体験を後で語り合うことで、組織として何か新しいものが生まれるのではないか、と考えたのです。

それは、すぐに具体的な成果として現れるものではないかもしれません。しかし、社員全員が同じ景色を見て、同じ時間を共有することで、見えない絆や、新たな視点が生まれるきっかけになるのではないか、と。

おわりに

これは、まだ完全な答えではないかもしれません。

会長がおっしゃった「覚悟」の意味。それは、社員が成長する機会を積極的に持つこと、そして組織全体が常に学び続ける姿勢を持つことなのではないかと、私は考えています。

そして、社員から上がるかもしれない、現状への問いや批判を、対話の始まりとして真摯に受け止めること。それもまた、経営者の「覚悟」の一つなのかもしれません。もちろん、これはあくまで私の解釈であり、会長がどのような深いお考えを持っていらっしゃるのかは、まだ分かりません。

皆様の会社では、社員に「外の世界」を見せる機会を、どのようにお考えでしょうか。
そして、それは経営者にとって、どのような「覚悟」を必要とするものだとお感じになりますか?

次回は、今回の工場見学で得られた社員たちの気づきや、私自身のさらなる学びについて、お伝えできればと思っています。どうぞお楽しみに。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また、メールさせていただきます。

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川上朋弘のプロフィール画像

記事を書いた人:川上 朋弘

(株)川上鉄工所 代表取締役

2007年(株)川上鉄工所入社、2022年代表取締役就任。
金型設計の奥深さに魅せられ、鍛造現場の職人たちの卓越した技術に感銘を受ける。
「アイディアを形にする鍛造の魅力」をより多くの人に伝えたいという想いから、情報発信を続けている。

保有資格:1級一般熱処理技能士