妥当性の確認(2025年_7月号)

川上鉄工所メルマガ_2025年_7月号

いつも大変お世話になっております。
株式会社川上鉄工所の川上朋弘です。

このメールはお世話になっている方々に
近況報告をお送りするメールです。

実は今、川上鉄工所では外部専門家(A氏)の
お力をお借りして工場の生産性を見直すという、
少し大きな変化に取り組んでいます。

A氏は実は、私たちが製造した部品を使用して
完成品にする企業の方です。

先日、この取り組みの一環として、私がA氏に工場の
生産実態や稼働状況などを説明していたときのことです。

「顧客要求の、この工程をなんとかできれば、
生産性が高まるのに・・・」と私が口にしたとき
A氏からは以下の返答がありました。

「決められたことは守るべきです。
しかし、その妥当性は検証し続けるべきですね」

この言葉を聞いた当初、私は、A氏の言葉を
製造現場で常に課題となる、

「標準の遵守」と「効率化」のバランスの話だと
受け止めていました。

しかし、後でふり返ったとき、A氏の言葉には
別の意味が込められていると気づいたのです。

その意味とは
「川上鉄工所は、我々が知らないところでも
正直に、決められた通りのものづくりをして
くれているのか?」という顧客からの問いです。

つまり、私たちの誠実さを問われたように感じて
その問いが心に刺さりました。

A氏の言葉はその通りで反論の余地はありません。

同時に、顧客要求への対応が現場にとって
新たな負担につながる場合もあるのは事実です。
(価格が見合えば・・とういう意味とはまた別で)

私たちは常にこうした葛藤を抱えています。

ただ、私たち製造業の現場において、
決められた手順や作業標準を守ることが
バラつきを抑え、品質の安定につながるのは
間違いのないことです。

お客様が現場を見学されない時でも、
見学されている時と同じ丁寧さで作業を続ける。
この積み重ねが信頼の土台になっています。

「これくらいなら大丈夫だろう」という
ほんの少しの気の緩みが、大きな品質問題を
引き起こし、お客様にご迷惑をかけてしまう。

今回の対話は、手順や作業標準を守ることの
重要性を改めて気づかせてくれました。

手順を守った上での検証でなければ意味がない。
それが本当の妥当性の確認だと私は思います。

今、改めて思うことは、理屈では分かったつもりでも、
実際にどう実行していくかを考え続けなければ
ならないということです。

そのために、まず、なぜその手順があるのか、
その目的を一人ひとりが理解することから始める。

例えばチェックシートを埋めるだけではなく、
「この一手間が、お客様のどんな価値を守って
いるのか」を共有していく。

その上で、敬意をもって「本当にこれでよいのか」
と問い直す。

答えがすぐに見つかるものではありませんが、
私たちなりに、一歩ずつ取り組んでいきたいと
思います。

私たちの目的は、安定供給を土台とし、お客様に
喜んでいただける、より良い製品をお届けすること。

そのための手段が、決められた手順の誠実な遵守です。
そして、その手段が目的に貢献しているかを、
問い続ける。

変化の激しい時代だからこそ、この当たり前で、
変わらない本質を、私たちは守り抜いていきたいと
考えています。

ちなみに皆様の現場では、
お客様との「約束」を、どのように
守り、育てていらっしゃいますか。

もしよろしければ、皆様のお考えもお聞かせいただけると、
嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、メールさせていただきます。

 

川上朋弘のプロフィール画像

記事を書いた人:川上 朋弘

(株)川上鉄工所 代表取締役

2007年(株)川上鉄工所入社、2022年代表取締役就任。
金型設計の奥深さに魅せられ、鍛造現場の職人たちの卓越した技術に感銘を受ける。
「アイディアを形にする鍛造の魅力」をより多くの人に伝えたいという想いから、情報発信を続けている。

保有資格:1級一般熱処理技能士