医療機器の展示会(Medtec Japan2025)への挑戦 ― 鍛造技術で医療機器の未来を支える ―

こんにちは。株式会社川上鉄工所の川上尚史です。

我々は昨年出展した「ものづくりワールド(九州)」での反省と学びを活かし、このたび東京で開催された医療機器の設計・製造に関する展示会【Medtec Japan 2025】に初めて出展いたしました。

今回は、「何を、誰に伝えるのか」を明確にし、医療業界という新たなフィールドに対して、より戦略的な展示スタイルで展示会に臨みました。

 

・展示会名:Medtec Japan 2025
・会期:2025年4月9日(水)~11日(金)  10:00~17:00
・会場:東京ビッグサイト 東展示棟

Medtec Japan 2025の開催結果は こちらからご覧いただけます

1. ターゲットを絞った展示アプローチ

医療分野に特化した展示会であることから、出展内容も「汎用部品としての鍛造品」ではなく、医療機器部品への応用を見据えた精密鍛造技術に焦点を当てました。

特に注目したのは、医療分野で多用されるチタン材の加工工程です。現在、チタン素材は鋼材メーカーから切り売りの状態で購入され、総削り加工によって部品が製造されるケースが多く見られます。

私たちは、この鋼材メーカーから加工メーカーへ素材が渡るまでの工程に注目し、そこに当社の鍛造技術を介在させることで、材料歩留まりの向上と調達コストの低減が可能ではないかと考えました。

「強度と精度の両立が求められる医療分野にこそ、川上鉄工所の熱間鍛造技術が活きるのではないか?」という仮説のもと、展示内容や資料も医療関係者にとってわかりやすく構成しました。

2. 前回の課題を活かしたブース設計

昨年の「ものづくりワールド(九州)」では、「ブースが暗い」「スタッフが少ない」といった反省点がありました。今回は以下のような改善を行いました。

(1) 照明の強化

照度と設置数を見直し、ブース全体を明るく。展示物の視認性を高め、来場者の目を引く演出を意識しました。

(2) スタッフ体制の工夫

限られた人員でも最大限対応できるよう、準備段階から担当メンバーを固定し、会期中も最初から最後まで一貫した運営体制としました。事前の情報共有や役割分担も徹底し、全体の統一感と対応力の向上を図りました。展示説明や接客対応の質も、ブレなく維持できた点は大きな成果といえます。

3. 医療業界ならではの反応と気づき

今回の展示会は「医療分野」に特化されていたこともあり、これまでの製造業展示会とは来場者の雰囲気もニーズも大きく異なることに気づかされました。

まず印象的だったのは、様々な国籍の方が多く訪れていたことです。服装もスーツに革靴といったビジネススタイルではなく、カジュアルな服装にスニーカーなどフラットでオープンな雰囲気の来場者が目立ちました。

このような違いを目の当たりにし、当社の展示スタイルや接客のあり方も再考する必要性を感じました。

また、「パッと見て何の会社かわからない」や、照明の効果あって明るく雰囲気は良いが、「展示ブースが少し寂しい(殺風景)」や「チタンとは書いていないので、医療と鍛造が結びつかない」といった具体的なご意見もいただきました。

これは、展示物や説明内容が“業界外の目線”で見たときに伝わりづらいという課題を浮き彫りにしたものと受け止めています。

一方で、「切削工程を減らすための鍛造」という視点には強い反応があり、医療業界の中でも効率化や材料ロス削減への関心の高さを改めて実感しました。

4. 今後の出展に向けた課題と方向性

このような現場での気づきを踏まえ、今後に向けて取り組むべき課題が明確になってきました。
具体的には以下の5点です。

(1) ブースの視認性・視覚的訴求力の強化

→ パッと見て「何をしている会社か」が伝わるよう展示物やビジュアルの設計を刷新する。

(2) 訴求内容の具体性と専門性の強化

→ 特に「チタン×鍛造×医療機器部品」の関係性を明確に伝える資料や事例の追加を行う。

(3) 国際色豊かな来場者に対応する展示体制

→ 英文資料や多言語対応の簡易ツールの導入を検討する。

(4) 業界規格や専門用語への理解深化

→ 医療機器分野の規格・要求仕様への対応力を高める社内学習体制を強化する。

(5) 展示ブースの演出面の見直し

→ 構造・導線・装飾を含めて、短時間でも印象に残る空間づくりを行う。

今後は、単なる製品紹介にとどまらず、医療業界の課題解決に貢献できる鍛造メーカーとして、技術力・対応力・発信力のすべてを一段階引き上げていく必要があると感じています。展示会を「出展して終わり」ではなく、市場との接点を生み出し、自社の立ち位置を見直す貴重な機会として、今後も積極的に活用していきたいと考えています。

5. 展示会は、可能性の入り口

今回の「Medtec Japan 2025」への出展は、川上鉄工所にとって新しい市場への挑戦でした。

業界が変われば求められる基準も価値観も異なることを肌で感じ、自社技術の新たな可能性と課題の両方を見つけることができました。この経験を糧に、今後も積極的に展示会へ参加し医療分野で選ばれる鍛造メーカーとして技術と提案力を磨き続けていきたいと思います。

当社ブースにお越しいただいた皆さま、貴重なご意見・ご質問をくださった皆さま、本当にありがとうございました。

(株式会社川上鉄工所 常務取締役 川上尚史)

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