ステンレス鋼の特徴が知りたい

ステンレス鋼は、高強度で、優れた耐食性により錆びにくい金属材料です。
また、1000℃の熱さにも-196℃の寒さにも耐えられる耐熱性があります。
さらに、鏡面仕上げやヘアライン仕上げなど、デザインにこだわることのできる意匠性(いしょうせい)があり、美しい外観を長く保つことができます。

高強度で、優れた耐食性を持つ金属材料には、他にチタンがあります。

チタンは軽量でありながら高強度で、優れた耐食性を持つ点が特徴です。それに対して、ステンレスは鉄を基にした合金であり、耐食性と強度が特徴です。(※ステンレスの成分は鉄(Fe)が基になっているため、非鉄金属ではありません)また、JIS規格では「ステンレス鋼」を「クロム(Cr)含有率を10.5%以上、炭素(C)含有率を1.2%以下とし、耐食性を向上させた合金鋼」と定義しており、鋼種記号の頭にはSUS(サス)という記号が付きます。

ステンレスにはどのような種類があるのか。どのような特徴があるのかなどについて、よくご質問いただく項目を中心にまとめました。

また、川上鉄工所はステンレス(SUS304・SUS316・SUS329J1・SUS630など)の鍛造実績があります。

1.ステンレスは何に使われていますか?

ステンレスは自動車部品、航空機部品、建築資材、家庭用品、医療機器、食品加工機械など、幅広い分野で使用されています。例えば、家庭用品の一つに、「ステンレス氷」があります。ステンレス氷は、冷却効果を持つステンレス製のアイスキューブです。冷たさを長時間キープできるうえに、繰り返し使用可能で、飲み物を薄めずに冷やすことができます。その他にも洋食器(ナイフ、スプーン、包丁など)にも使われています。

2.ステンレスにはどのような種類がありますか?

ステンレス鋼は大きくCr系(クロム系)とNi-Cr系(ニッケル-クロム系)に大別できます。それぞれの特徴等は下表の通りです。

系統 特徴など

Cr系

(クロム系)

マルテンサイト系

・代表例:410ステンレス鋼、420ステンレス鋼
・高い強度と硬度を持ち、磁性があります。
・クロム(約12-14%)を含み、ニッケルをほとんど含みません。
・熱処理によって硬度を調整できます。
・用途:刃物、工具、バルブ、ポンプ部品
フェライト系 ・代表例:430ステンレス鋼
・良好な耐食性と強度を持ち、磁性があります。
・クロム(約17%)を含み、ニッケルをほとんど含みません。
・熱処理によって強度を向上させることができます。
・用途:自動車部品、家庭用電化製品、装飾品、建築内装

Ni-Cr系

(ニッケル-クロム系)

オーステナイト系

 

・代表例:304ステンレス鋼、316ステンレス鋼
・高い耐食性と優れた加工性を持ち、非磁性です。
・クロム(約18%)とニッケル(約8-10%)を主成分とする。
・316ステンレス鋼はモリブデンを含み、特に塩水環境の耐食性が向上。
・用途:調理器具、食器、建築材料、化学装置、医療器具

オーステナイト-フェライト系  (二相ステンレス) ・代表例: 2205ステンレス鋼
・オーステナイト系とフェライト系の両方の特性を併せ持ちます。
・高い強度と優れた耐食性、特に応力腐食割れに対する耐性が強い。
・クロム(約22-23%)、ニッケル(約5-6%)、モリブデンを含む。
・用途:化学プラント、海洋構造物、石油・ガス産業
析出硬化系 ・代表例:17-4PH(630ステンレス鋼)
・高強度と優れた耐食性を持ち、熱処理によって機械的性質が向上。
・クロム(約17%)、ニッケル(約4%)、銅、アルミニウムを含む。
・用途:航空宇宙、化学処理設備、海洋設備、医療用インプラント

3.SUS304(サス サンマルヨン)とは何ですか?

SUS304は工業用途で使用されるステンレスの中で最も一般的で代表的なステンレスのひとつです。SUS(サス)は「Steel Use Stainless」の略で、「SUS+数字」で種類を表します。304はその鋼種を示しています。

また、SUS304(サス サンマルヨン)は「18-8ステンレス」とも呼ばれ、優れた耐食性と加工性を持っています。(※「18-8」とはCr(クロム)18%、Ni(ニッケル)8%の合金だということを意味する略語です。)

4.SUSF304(サス エフ サンマルヨン)とは何ですか?

SUSF304は、鍛造して作られたSUS304のことです。鍛造により、さらに強度と耐久性が向上します。

5.ステンレスの欠点は何ですか?

ステンレスの欠点としては、加工が難しいこと、重量があること、特定の環境下で腐食する可能性があることなどが挙げられます。

6.ステンレスの加工が難しい理由は何ですか?

ステンレスは高強度と高耐久性を持つため、加工時に高い工具摩耗や加工硬化が起こりやすいです。また、熱伝導率(熱の伝わり易さを表す定数)が低いため、切削加工の際に発生する熱が逃げにくく、工具の刃先に負担がかかり、工具寿命が短くなってしまったり、型鍛造時の型の寿命(生産できる個数)が短くなりやすいです。

7.ステンレスは錆びますか?

ステンレスには錆び(腐食)に強く、錆びにくいという特徴があります。なぜ錆びにくいのか?というと、その理由は、表面被膜にあります。この表面被膜のことを不導態被膜(ふどうたいひまく)と言います。ステンレスの優れた耐食性の理由は、表面に生成する厚さ数ナノメートル(1nm:ナノメートルは、1mm:ミリメートルの100万分の1)の不導態被膜の成分と構造にあります。例えば、クロム含有率12%のステンレスであっても、不導態被膜のクロム含有率は90%にもなります。

また、その被膜は、アモルファス状(結晶構造をもたない状態)のため、非常に密着性の高い(転移の様に構造的に弱い箇所がない)構造となっています。そのため、外気の空気や水分を寄せつけず、鉄が酸化する(錆びる)ことを防ぎます。また、一度壊れても、周囲に酸素があれば自動的に再生する機能をもっています。

ただし、全く錆びないわけではありません。特に塩分や強酸、強塩基の環境下では錆びやすくなります。屋外で雨に晒された場合も、基本的には錆びにくいですが、長期間にわたり塩分や汚れが付着すると錆びる可能性があります。つまり、不導態被膜が形成されにくくなると錆びやすくなります。

8.ステンレスは磁性をもちますか?

一部のステンレス(主にフェライト系やマルテンサイト系)は磁性を持ちます。オーステナイト系は基本的に非磁性です。

9.ステンレスは電気を通しますか?

ステンレスは電気を通しますが、銅やアルミニウムに比べて導電性は低いです。

10.鋭敏化(えいびんか)ってなに?

オーステナイト系ステンレス鋼は、ある一定の温度域にさらされると、クロムと炭素が結合し、クロム炭化物となり、結晶粒界に沿って析出します。この現象を「鋭敏化」(えいびんか)と言います。鋭敏化によって不動態皮膜を形成するクロムが欠乏する為、粒界腐食(りゅうかいふしょく)の原因となり、ステンレス鋼の特色である耐食性が著しく低下します。

11.ステンレスは人体に安全ですか?

ステンレスは、食品加工機械や医療機器にも使用されるほど安全であり、人体に対して無害です。

ただし、一部の人には、金属アレルギーを引き起こすことがあります。特にニッケルを含むステンレスに対して、金属アレルギーの反応が出ることがあります。

12.ステンレス鋼の熱間鍛造で注意することはありますか?

熱間鍛造を行う場合、鋼材の加熱温度、鍛造温度、及び加工率は、材料の組成に応じて最適な条件を選択する必要があります。加熱温度が低くなるほど、結晶粒を微細化できますが、成形性が悪くなるので注意が必要です。

※参考図書:「図解入門よくわかるステンレスの基本と仕組み」(飯久保知人著)

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