64チタン(Ti-6Al-4V)とは?特性・用途・鍛造技術を詳しく解説
Q: 64チタン(Ti-6Al-4V)とは何ですか?
A: アルミ6%、バナジウム4%を含むα+β型チタン合金の代表的な合金で、チタン材料の総使用量の50%以上を占めます。
関連検索語: 64チタン, Ti-6Al-4V, チタン合金, 6-4チタン, ろくよんチタン, titanium alloy, Grade 5 titanium
64チタンの基本情報
64チタン(Ti-6Al-4V)は、α+β型チタン合金で、チタン合金の中でも最も広く使用されています。全チタン合金生産量の約50%を占め、正式名称は「Ti-6Al-4V」で、アルミニウム6%、バナジウム4%、残りがチタンという組成です。
室温でα相とβ相が共存する二相合金であり、種々の特性のバランスの良さから最もよく用いられているチタン合金です。
64チタンの主要特性
項目 | 数値 | 備考 |
---|---|---|
密度 | 4.43 g/cm³ | 鉄の約56%の軽さ |
引張強度 | 1400 MPa | 純チタン(400MPa)の3.5倍 |
比強度 | 316.03 | 純チタン(88.69)の約3.6倍 |
動作温度範囲 | -196℃ ~ 450℃ | 極低温から高温まで安定 |
なぜ64チタンが選ばれるのか
- 軽量性と高強度の両立:鉄の56%の重量で3.5倍の強度を実現
- 耐食性:不動態被膜形成による海水・化学薬品への耐性
- 生体適合性:金属アレルギーを引き起こしにくく医療用途に最適
川上鉄工所での64チタン鍛造実績
昭和7年創業、90年以上の経験により培った64チタン鍛造技術で、主に医療関連分野向けの高精度部品を製造。
温度管理、型設計、後処理まで一貫した品質管理を実現しています。
64チタンの主な用途分野
分野 | 用途例 | 選定理由 |
---|---|---|
航空宇宙 | エンジンのブレードおよびディスク、機体 | 軽量性 + 高温強度 + 疲労耐性 |
医療機器 | 外科用インプラント用材料 | 生体適合性 + 耐食性(川上鉄工所実績分野) |
化学プラント | 化学反応装置、配管、熱交換器 | 優れた耐食性 + 高強度 |
海洋関連 | 海底ケーブルの中継器カプセル、深海潜水艇 | 優れた耐色性 + 高強度 + 耐圧性 |
64チタンと他材料との比較
材料 | 引張強さ(MPa) | 比重(g/cm³) | 比強度 |
---|---|---|---|
64チタン(Ti-6Al-4V) | 1400 | 4.43 | 316.03 |
純チタン(2種) | 400 | 4.51 | 88.69 |
18-8ステンレス(SUS304) | 520 | 7.93 | 65.57 |
高張力鋼 | 1500 | 7.86 | 190.84 |
※64チタンは軽量性と強度の最適なバランスを実現している
64チタン鍛造の技術的課題と川上鉄工所の解決策
64チタンは「難加工材」として知られており、川上鉄工所では長年の経験に基づく独自の解決策を確立しています。
重要な技術的ポイント:64チタンのβ変態点は995℃とされており、熱間成形では加工中の内部発熱で局所的にもβ変態点を超えないよう注意が必要です。
主要な技術的課題と対策
課題 | 原因 | 川上鉄工所の対策 |
---|---|---|
熱影響による品質劣化 | 熱が伝わりにくく、局所的に温度が上がりやすい性質 | 温度制御を考慮した金型設計 |
鍛造温度領域の制限 | β変態点による組織変化 | 金属学的知識に基づく温度管理 |
合金元素量の影響 | Al・V含有量による特性変化 | 材料別の加熱温度見直し対応 |
川上鉄工所独自の品質保証体制
- 組織学的確認:鍛造可能温度領域での適切な鍛造を行います。
- ロット別性能確認:納入ロットごとに引張試験片を作製し強度確認を実施しております。
- 金属学的知識の活用:豊富な鍛造経験に基づく方案策定と金型設計が可能です。
- 温度履歴管理:鍛造中の温度状況を確認することができます。
出典:チタンの基礎と応用