コバルトクロム合金とは?特徴と特性について

コバルトクロム合金とは、主にコバルト(Co:原子番号27)とクロム(Cr:原子番号24)をベースとした金属材料です。コバルト合金の特徴や用途、鍛造時の留意点等についてまとめてみました。

 

1.コバルトクロム合金の特徴は?

コバルトクロム合金は、非常に高い強度、優れた耐食性、耐摩耗性、耐熱性を有する金属材料です。コバルトクロム合金の特徴は、過酷な環境下でもその性能を維持できることです。医療や工業分野で広く使用されています。

2.コバルトクロム合金は何に使われていますか?

コバルトクロム合金は、軽量でありながら非常に強度が高い合金です。コバルトクロム合金の生体適合性の高さ、長期間の使用に耐える耐久性、さらには感染や腐食に対する強い耐性から、歯科用義歯の金属床、歯科インプラントや人工関節などの医療分野で使用されています。コバルト合金は、口腔内での腐食やアレルギーのリスクが低い点が大きなメリットです。

ただし、生体内に使用される金属は、金属アレルギーの原因となりやすいNi(ニッケル)の含有量を極端に減らす工夫がされています。コバルトもアレルゲンとして作用することが知られており、コバルトクロム合金の生体への使用にあたっては、パッチテストなど、あらかじめアレルギー検査を十分に行っておく必要があります。

その他に、航空宇宙工業ではジェットエンジンのタービンブレードなどに利用されています。

3.コバルトクロム合金の利点と欠点は何ですか?

(1) コバルト合金の利点

コバルト合金には、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、生体適合性といった利点があります。

ます、耐食性としては、Co-Cr合金はクロムの酸化被膜により、非常に高い耐食性を持ち、海水や酸性環境でも錆びにくいです。耐摩耗性としては、硬度が高く、摩耗に強いため、長寿命の部品として理想的です。耐熱性としては、800℃を超える高温下でも性能を維持し、高温環境での使用に適しています。

生体適合性としては、医療用途において、体内での腐食が少なく、生体に対して安全です。

利点 内容
1 耐食性 Co-Cr合金はクロムの酸化被膜により、非常に高い耐食性を持ち、海水や酸性環境でも錆びにくい。
2 耐摩耗性 硬度が高く、摩耗に強いため、長寿命の部品として理想的。
3 耐熱性 800℃を超える高温下でも性能を維持し、高温環境での使用に適している。
4 生体適合性 医療用途において、体内での腐食が少なく、生体に対して安全。

(2) コバルト合金の欠点

一方でコバルトクロム合金にも欠点はあります。コバルト合金の主な欠点は、加工の難しさとコストです。

コバルトクロム合金は硬度が高いため、加工が非常に困難であり、特に切削加工において、高い技術と深い知見が必要です。また、 原材料自体が高価であること、原材料が入手しにくいこと、などを含めると、他の合金と比較してコバルトクロム合金の製品は高価になってしまいます。

欠点 内容
1 加工の難しさ 硬度が高く、加工が困難。特に切削加工には高い技術と知見が必要。
2 トータルコスト 加工の難しさに加え、原材料自体が高価で入手しにくいので、他の合金と比較して高価

4.コバルトクロム合金の鍛造時の留意点は?

コバルト合金の用途に一つに人工股関節などの整形外科インプラントがあります。

コバルト-クロム合金の鍛造品を人工股関節等として使用する際は、機械的性質ならびに微細構造 (Microstructure, ミクロ組織) について、ASTM F799規格を満たすことが義務付けられています。

ASTMとは、世界最大規模の標準化団体である米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials: ASTM、現在はASTM International)が策定する規格です。

医療用のコバルト-28クロム-6モリブデン合金の鍛造製品に関する標準仕様を定めた規格がASTM F799です。この規格は、主に整形外科インプラントやその他の医療デバイスに使用される高強度鍛造品の品質と特性を確保するための基準として使用されています。

ASTM F799の主な内容としては、材料の成分、機械的性質とともに、コバルトクロム合金が鍛造によって製造されることが求められています。その理由は、鍛造により材料の粒子が整列し、強度が向上するためです。

ASTM F799規格に準拠する高強度鍛造品とするためには、鍛造時の温度、各部の加工率とともに、鍛造後の熱処理における保持温度ならびに時間を厳密に管理することが必要です。

川上鉄工所は、平成27年度「きらめき岡山創成ファンド支援事業助成金」に採択され、2年間、岡山県工業技術センターと共同研究した実績があります。※きらめき岡山創成ファンドのご案内 → 岡山県産業振興財団:きらめき岡山創成ファンド

共同研究のテーマ名は「コバルト-クロム合金の熱間型打ち鍛造における加工率と再結晶の高精度制御による高信頼性人工股関節製造技術の開発」です。

コバルトクロム合金(CoCr合金)の鍛造品をお考えの場合は、以下のフォームからご相談ください。

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5.よくある質問(FAQ)

コバルトクロム合金とは何ですか?

コバルトクロム合金(Co-Cr合金)は、耐腐食性・耐摩耗性・高温強度に優れた金属材料で、コバルトとクロムを主成分とします。医療機器や航空部品など、過酷な環境下で使用されます。

コバルトクロム合金はどんな場面で使われますか?

主に人工関節、歯科インプラント、ガスタービンブレード、化学プラントのバルブやシートなど、耐摩耗性や生体適合性が求められる用途で活用されています。

チタン合金とコバルトクロム合金の違いは?

チタン合金は軽量・耐食性が高く、主に軽量化や非磁性が求められる場面に適しています。一方、コバルトクロム合金はより硬く、耐摩耗性・高温強度に優れています。

鍛造でのコバルトクロム合金の課題は何ですか?

高硬度・高弾性のため、金型の耐久性が課題の1つとして考えられます。また、加熱温度や鍛造時の温度管理、場合によっては鍛造後の熱処理における保持温度と時間の最適化も課題のひとつです。

コバルトクロム合金はなぜ医療に使われるのですか?

生体適合性が高く、アレルギーが起きにくく、摩耗しにくいため、人工関節や歯科用金属などの医療用途で高く評価されています。

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記事を書いた人:川上 朋弘

(株)川上鉄工所 代表取締役

2007年(株)川上鉄工所入社、2022年代表取締役就任。
金型設計の奥深さに魅せられ、鍛造現場の職人たちの卓越した技術に感銘を受ける。
「アイディアを形にする鍛造の魅力」をより多くの人に伝えたいという想いから、情報発信を続けている。

保有資格:1級一般熱処理技能士