JIS H 4650(チタン合金棒)とは?規格の全体像と川上鉄工所の対応材料
📌 規格情報について
本記事は、JIS H 4650:2016(現行最新版)に基づいて解説しています。2021年10月20日に日本産業標準調査会(JISC)による確認が行われ、内容に変更がないことが公示されています。
※2019年7月1日の産業標準化法施行により、従来の「日本工業規格」は「日本産業規格」に改称されています。
JIS H 4650は、「チタン及びチタン合金の棒」について規定した日本産業規格です。この規格は、断面が円形、正方形、長方形、正六角形などの形状を持つチタン材料を対象としています。
チタンは軽量・高強度・耐食性・生体適合性という優れた特性を持つ反面、加工が極めて難しい「難削材」として知られています。川上鉄工所では、90年以上の歴史で培った熱間鍛造技術を駆使し、JIS H 4650に準拠した高品質なチタン合金棒から、鍛造を行っています。
JIS H 4650の基本情報と適用範囲
規格の目的と対応国際規格
JIS H 4650は、工業用純チタンおよびチタン合金棒の品質を一定に保ち、適正な流通と利用を促進するために制定されました。
重要: 2019年7月1日の産業標準化法施行により、規格の正式名称が「日本工業規格(Japanese Industrial Standards)」から「日本産業規格(Japanese Industrial Standards)」に変更されています。なお、規格番号「JIS」の略称は変わりませんが、法的には「産業規格」として扱われます。
最新の改正(2016年)では、ASTM規格やISO規格との整合性を高めるための見直しが行われており、グローバルなモノづくりに対応した内容となっています。規格の詳細については、日本産業標準調査会(JISC)の公式サイトでも確認できます。
なぜこの規格が重要か:材料特性からの考察
チタンが航空宇宙、医療、スポーツ分野で多用されるのは、以下の卓越した特性があるからです。
- 比強度の高さ: 鋼に匹敵する強度を持ちながら、重量は約6割と極めて軽量です。
- 圧倒的な耐食性: 表面に強固な不動態被膜を形成するため、海水や薬品に対しても高い耐性を誇ります。
- 生体適合性: 金属アレルギーを起こしにくく、インプラントなどの医療機器に最適です。
しかし、チタンには「熱伝導率が低く、変形抵抗が大きい」という加工上の弱点があります。そのため、JIS規格に基づいた厳格な材料選定と、それに対応できる高度な鍛造技能が不可欠なのです。
チタン合金棒の種類と記号の読み方
JIS H 4650では、純チタン系とチタン合金系が明確に区分されています。
記号の意味
まず、記号の読み方を理解しましょう。各記号には以下のような意味があります。
- TB: Titanium Bar(純チタン棒)
- TAB: Titanium Alloy Bar(チタン合金棒)
- 数字: 材料固有の番号(強度の目安や合金成分を反映)
- 末尾のアルファベット(H/C): 製造方法(H=熱間加工、C=冷間加工)
代表的な材料一覧表
| 種類(記号) | 特徴・引張強度 | 主な用途 | 川上鉄工所 実績 |
|---|---|---|---|
| TAB 6400 H | 64チタン(α-β合金)。強度、加工性のバランスが最高。 | 航空宇宙、自動車、スポーツ | ★ |
| TB 340 H | 純チタン2種。耐食性に優れ、最も汎用的。 | 化学プラント、医療機器 | – |
| TB 270 H | 純チタン1種。軟らかく成形性に優れる。 | 熱交換器、プレート | – |
| TAB 1500 H | α合金(Ti-5Al-2.5Sn)。高温強度が高い。 | エンジン部品、極低温容器 | – |
| TAB 3250 H | α-β合金(Ti-3Al-2.5V)。冷間加工性が良い。 | スポーツ、医療 | – |
64チタン(TAB 6400 H / Ti-6Al-4V)の詳細
チタン材料の中で世界的に最も普及しているのが、通称「64チタン(ロクヨンチタン)」です。
化学成分の規定値と役割
JIS H 4650におけるTAB 6400の規定は以下の通りです。
- Al(アルミニウム) 5.50〜6.75%: α相を安定させ、材料を軽量化しつつ強度を大幅に向上させます。
- V(バナジウム) 3.50〜4.50%: β相を安定させ、熱処理効果を高め、加工性を改善します。
- O(酸素) 0.20%以下: 強度と延性のバランスに影響するため、厳格な管理が求められます。
これらの元素が絶妙なバランスで配合されることで、64チタンは優れた機械的性質を発揮します。
機械的性質
TAB 6400 H(径8〜100mmの場合)は、引張強度895〜1,025 MPa、伸び10%以上という極めて高い強度性能を誇ります。
川上鉄工所の強み
64チタンは変形抵抗が大きく、適切な温度管理と工程設計を行わないと割れなどの品質低下を招きます。当社では、最適な鍛造プロセスを設計し、64チタンのポテンシャルを最大限に引き出します。
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純チタン(TB 340 H等)の特徴
一方、純チタンは合金成分をほとんど含まず、その耐食性が最大の武器です。
- 不動態被膜の仕組み: 表面に形成されるナノレベルの酸化被膜(TiO2)が、外部からの腐食因子を遮断します。
- 用途: 腐食リスクの高い化学プラントや、人体への安全性が求められる医療機器(手術器具等)に多用されます。
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機械的性質と品質保証
JIS H 4650では、材料の信頼性を担保するために厳格な試験方法が定められています。
- 引張試験: JIS Z 2241に基づき、引張強度、耐力、伸び、絞りを測定します。
- 品質管理: 製品には必ずミルシート(材料証明書)が発行され、化学成分や機械的性質が規格を満たしていることが証明されます。
また、川上鉄工所では、鍛造プロセスにおいて厳格な温度管理を実施し、ロットごとの品質のバラつきを抑えた安定供給を実現しています。
寸法規格と許容差
JIS H 4650では、棒材の直径範囲を主に8mm〜300mmとして規定しています。
- 許容差(公差): 熱間加工(H)か冷間加工(C)か、また寸法区分によって細かく規定されています。一般的に、冷間加工品の方が公差が厳しく設定されており、より高精度な製品となります。
- 実務上のポイント: 鍛造加工においては、材料の直径公差がそのまま歩留まり(材料利用率)に直結します。また、公差が大きい材料を使用する場合は、削り代を多めに確保する必要があり、加工コストに影響します。
さらに、川上鉄工所では、精度の高い鍛造技術により、余肉を最小限に抑えたコストパフォーマンスの高い製品を提供します。適切な材料選定と加工技術の組み合わせにより、お客様の要求仕様を満たしながら、経済的な製造を実現しています。
チタン合金棒の発注時チェックポイント(実務)
チタン合金棒を発注する際には、トラブルを防ぐため以下の5項目を必ず確認してください。
- 記号の正確な指定: TAB 6400 H(合金)とTB 340 H(純チタン)は全く別物です。用途に応じて適切な材料記号を指定することが重要です。
- ミルシートの有無: 航空宇宙や医療分野では、トレーサビリティの確保が必須です。材料証明書により、化学成分や機械的性質が規格値内であることを確認できます。
- 表面仕上げの状態: 黒皮付き、酸洗い、研磨など、後工程に合わせて選択してください。表面状態は加工性や最終製品の品質に直接影響します。
- 寸法許容差: 削り代を考慮した径の選定が必要です。特に精密部品では、公差の把握が歩留まりに大きく影響します。
- ロット管理: 特に難削材であるチタンは、同一ロットでの加工が刃物寿命の安定に寄与します。ロット間の品質バラつきを最小限に抑えることで、安定した加工が可能になります。
これらのポイントを押さえることで、材料調達から加工まで、スムーズな工程管理が実現できます。
用途別チタン合金棒の選定ガイド
実際の製造現場では、用途に応じて最適な材料を選定することが重要です。ここでは、代表的な用途別に推奨される材料をご紹介します。
航空宇宙分野
航空機や宇宙機器の部品には、TAB 6400 H(64チタン)が最も多く採用されています。その理由は、高い比強度と優れた疲労特性を兼ね備えているためです。エンジン部品、着陸装置、構造材など、高負荷がかかる箇所に使用されます。
医療分野
人体に埋め込むインプラントや手術器具には、TB 340 H(純チタン2種)またはTAB 6400 Hが使用されます。純チタンは生体適合性が特に高く、長期間体内に留置する用途に適しています。一方、強度が必要な整形外科用インプラントには64チタンが選ばれます。
化学プラント
腐食性の高い環境下では、TB 340 Hの耐食性が威力を発揮します。海水淡水化装置、熱交換器、配管材料などに広く使用され、ステンレス鋼では対応できない過酷な環境でも長期的な信頼性を提供します。
スポーツ・レジャー
ゴルフクラブ、自転車フレーム、テニスラケットなどには、TAB 6400 HやTAB 3250 Hが使用されます。軽量でありながら高強度という特性が、競技用具のパフォーマンス向上に貢献しています。
国際規格との整合性と今後の動向
JIS H 4650は、国際的なチタン規格との整合性を重視して設計されています。
ASTM B348との対応
米国のASTM B348は、38種類以上のグレードを規定する世界標準のチタン棒規格です。この規格と比較すると、JIS H 4650の主要材料は化学成分がほぼ一致しており、国際規格に準拠した材料調達が可能な設計となっています。
主な対応関係:
- TB 340 H(純チタン2種)⇔ ASTM Grade 2
- TAB 6400 H(64チタン)⇔ ASTM Grade 5
- 11種(Ti-Pd)⇔ ASTM Grade 7
ISO規格の発行(2023年)
国際標準化の動きも加速しています。2023年には、日本主導でISO 7217:2023(チタン合金棒の国際規格)が発行されました。この規格は、JIS H 4650の内容をベースとしつつ、欧米のニーズを取り込んだグローバルスタンダードとして、今後の国際取引における基準となることが期待されています。
さらに翌2024年には、材料記号の統一を目指すISO 23515(命名体系規格)も整備され、次回のJIS改訂時には国際共通記号への移行が検討される見込みです。
川上鉄工所のチタン鍛造技術とJIS規格対応
私たちは単に規格通りの材料を扱うだけでなく、その特性を熟知した「鍛造のプロ」としてソリューションを提供します。
- 90年以上の実績: 長年培った独自の技能により、JIS H 4650準拠材料のポテンシャルを100%引き出します。特に、難加工材であるチタン合金の鍛造においては、温度管理と変形制御が成否を分けるため、豊富な経験が不可欠です。
- 高度な熱間鍛造: 温度変化に敏感なチタンに対し、厳密な温度管理を行い、内部組織の均質化を図ります。これにより、機械的性質のバラつきを最小限に抑え、高品質な製品を安定供給できます。
- 小ロット・多品種: チタン材においては200gから1kgまでのサイズに対応し、試作から量産まで柔軟対応致します。お客様のニーズに合わせた最適な製造プロセスをご提案します。
また、当社では規格適合性の確認だけでなく、お客様の用途に応じた材料選定のアドバイスも行っています。豊富な実績に基づく技術的知見により、最適な材料と加工方法の組み合わせをご提案いたします。
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よくある質問(FAQ)
Q1. JIS H 4650とは何ですか?
A. JIS H 4650は、チタン及びチタン合金の棒材について規定した日本産業規格です。断面が円形、正方形、六角形などの形状を持つチタン材料を対象とし、品質保証と適正な流通を目的としています。
Q2. 64チタン(TAB 6400 H)の特徴は?
A. 64チタン(Ti-6Al-4V)は、アルミニウム6%、バナジウム4%を含むα-β型チタン合金で、強度と加工性のバランスに優れています。引張強度895-1,025 MPaと高強度で、航空宇宙・医療・スポーツ分野で最も汎用的に使用されます。
Q3. 純チタンとチタン合金の違いは?
A. 純チタン(TB系)は合金元素をほとんど含まず、耐食性に優れますが強度は控えめです。チタン合金(TAB系)は合金元素を添加することで高強度を実現し、航空宇宙など高負荷用途に適しています。
まとめ
川上鉄工所の強み
当社は90年以上にわたり、チタンをはじめとする難削材の鍛造に向き合ってきました。JIS H 4650の厳格な規格要求に応えるだけでなく、独自の温度管理とシミュレーション技術により、材料の「加工しにくさ」を「高品質な製品」へと昇華させます。航空宇宙・医療といった妥協の許されない分野で選ばれ続けるのが、川上品質です。
JIS H 4650準拠のチタン鍛造加工のご相談は、川上鉄工所へお気軽にお問い合わせください。
