64チタン(Ti-6Al-4V)鍛造品を紹介します
お客様の要望で昨今注目されているのが、非鉄金属です。中でも『チタン』は軽量化と高強度が要求される航空機業界などで広く認知されている材質です。加えて、チタンは酸素との結合力が強い金属です。そのため、表面に酸化被膜(さんかひまく)という被膜を形成します。この被膜が緻密で、極めて安定した不動態被膜となり、酸化を防ぐため耐食性もあります。
ちなみに、不動態化皮膜の膜厚は1nm(1μmの1000分の1)ほどと言われているため、肉眼では確認することができません。インフルエンザウイルスの大きさが直径100nm程度、と考えると、不動態化皮膜がいかに薄いかがよくわかります。
『チタン』は純チタンとチタン合金の2種類に大別されます。
純チタンは名前に「純」がつきますが、Tiの化学成分が100%と、いうわけではなく、他の成分(O、N、Feなど)もわずかに含まれます。そのため、他の成分の添加量別にJIS規格(ジス:日本産業規格)では第1種から第4種までの4種類に分けられます。
一方、チタン合金はアルミニウムやニッケルなどの合金元素を混ぜて(添加して)つくられたチタンになります。
合金元素を添加しているチタン合金は、純チタンより耐食性や強度などを向上させることができますが、チタン合金は価格が高く、加工が難しいという特徴があります。
純チタンとチタン合金どちらにも言えることですが、チタンの結晶構造は変態点温度以下の低温域では稠密六方晶(しゅうみつりっぽうしょう:hcp)構造を持ち、変態点温度以上の高温域では体心立方晶(たいしんりっぽうしょう:bcc)構造へと同素変態します。一般的には hcp 構造をα相、bcc 構造をβ相と呼び、この変態温度をβ変態点(βトランザス)と言います。
その中でチタン合金はα型合金、β型合金、α+β型合金、の3つのタイプに分類されます。
α型合金は、稠密六方晶のα相からなる合金
β型合金は、体心立方晶のβ相からなる合金
α+β型合金は、室温でα相とβ相が共存する二相合金
弊社鍛造品で納入実績のある鋼種はα+β型合金のTi-6Al-4V合金(64チタン)です。
64チタンは、質量分率で、アルミ(Al)が6%、バナジウム(V)が4%含まれているチタン合金です。
「64チタン」(Ti-6Al-4V)は加熱温度が高すぎると目的とする組織が得られないので、鍛造可能温度領域で鍛造できたかを確認するために、納入ロット毎に鍛造品から引張試験片を作製し、強度などの性能確認を行ないます。
合金元素の添加量によってβトランザス(β変態点)は変わります。(一般的には、β変態点温度が最も高いのはα型合金、次に、α+β型合金、そしてβ型合金が一番低いとされています。)
そのため、熱間鍛造では、鍛造中の温度状況を観察し、作業することが鍛造品の性能を決める重要な要素となります。
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チタンの特性とチタンの鍛造の特徴が知りたい。